まず僕には疑問がありました。
アートや音楽とか、他の現場はよく知らないんだけど、映像の作り方っていうと、小さいのから大きいのまで、ほとんどがピラミッド形式で作っています。指示が上 から下へってやつですね。で、下の人であるアシスタントに求められるのは、その指示を理解して、早く正確にこなすってことです。
下の人が、作る楽しみを得られるのは、監督やプロデューサーになってから。
それまでは下積みとされ、3日間眠れないとか、1ヶ月家に帰れないとか、それで現場でウトウトしようものなら、殴られ蹴られ、かなり壮絶な生活を強いられるわけです。
そ ういう事を、上等じゃねぇかと、映画やドラマを作りたいって夢を実現させるために闘いを挑み、晴れて監督、プロデューサーになった人たちで、日本の映像業界は成り立っている訳です。
当然、夢破れて、映像を離れていく人もたくさん出てきますが、専門学校などから夢を持った若い人たちが毎年入ってきますから、人がいないって問題もおきな い。
で、 トップに上り詰めたからあとは自分の好きに映像が作れるぞと思ったら、シャム猫を膝に抱えて、ワイングラスを片手に、顔は暗くてよく見えないって人たちが 現れるんです。
それは制作費を出すクライアントだったり、出演する芸能プロダクションの社長だったり、最近ではマーケティングだったりするんですが。
今度はそういう人たちとの闘いになるわけです。
そんな闘いの末に生み出された映像っていうのが、テレビや映画館を彩るわけですが、どうにも楽しめない僕がいるんです。もちろん中には好きなのあるけど、とても少ない。
これは一体なんなんだ?
あれだけ苦労して作られた映像のはずなのに、なんでつまらないの?
なんでどれも同じに見えてしまうの?
そんな疑問がずっとあったわけですが、これは単純に、その作品の監督やプロデューサーの能力がどうの、という問題ではないと思います。
制作費を出すスポンサー、放送するテレビ局、視聴者など、映像作品の周りをとりまく環境やシステムが、そういう作品しか世に出させないのだと感じています。
こういう風に感じてしまったから、僕はこのシステムの中に飛び込んで表現をしていく事に二の足を踏んでしまって、大学の職員をやりつつ作品を作っているんだけど。